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生徒がちゃんと時間を把握できるように、普通にチャイムが鳴る。最初何事かとキョドったレンだが、学校未経験と知った周囲が優しく教えてくれる。
今鳴ったチャイムは、お昼休みを告げるチャイムである。うんうん苦しんでいた者はこれ幸いと廊下に駆け出す。 「三橋は…!おお!弁当!」 浜田の声に、周囲がどよめく。 「お前、作った?」 一人が話しかけてくる。おっかなびっくりに首を振ると、「母親?父親?お姉ちゃん?妹?それとも恋人?」 やんややんやと盛り上がる。レンは頑張って、同じ除虫屋の栄口が作った事を説明する。 「ほうほう…中身見せて!」 「い、いい、よ!」 かぱり、と開けると、おお!と声があがる。 「料理名人なんだな…」 「う ん!」 誰かがごくりと唾を飲む。ご飯にはごま塩が、おかずは焼いた魚の身、ポテトサラダ、ハンバーグを主として、様々な具がこれでもかと入っている。 「いいなー」コールがかかる。レンが困った顔をする、と、浜田が「お前ら、自分の昼飯は?抜きか?」と意地悪に訊く。それで全員がはっ、となった。 慌てて全員が廊下へと消える。先に戦利品を収穫したクラスメイトがなんだなんだという顔をしながら教室へ戻ってくると、レンの弁当を発見する。浜田も昼飯を買いに行った為、良く分からなくなってしまった。が、他の者たちがパンやおにぎりをパクつきだした時、レンの胃袋も限界だった。 「い、ただき、ますっ!」と箸を持ち、後は一心不乱に食べる。ちょっとおかずを狙っていた者たちはレンの美味しそう&鬼気迫る食べ方に今日は仕方がないと諦める。 レンはももも、もも…と幸せそうに食べて、空っぽになった弁当箱を見て、ちょっと残念そうに見ながらも「ごちそうさま。」とコールした。 「なあ、三橋。」 そのタイミングを狙っていたのだろう、浜田が話しかけてくる。 「?」 首を傾げるレンに、浜田はにっと笑いながら、「お前、除虫屋のポジション、どこ?爆破士?結界士?まさか鷹の目?」 「う、ううん。癒し手!」 一瞬、時が止まった後、クラスメイトが一斉に「なにぃ!」と声をあげた。 「癒し手…。そりゃ、一般除虫屋クラスにゃいけねーわな。」 浜田も苦笑する。したところで予鈴が鳴る。昼休みが残り10分の知らせだ。 「なに、びっくりする事はない。様々なもと除虫屋とか現除虫屋がいたけど、癒し手が来るとは誰も思わなかったからな!」 じゃあ、午後は数学もしくは算数!と浜田は席を離れる。 レンはどきどきしながら、あっという間の昼休みを過ごしたのであった。 PR |
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「ここに来るのは担任のみ!朝と帰りのホームルームのみ!」
びしっと言われ、レンは竦み上がった。その驚き方に浜田も驚いたのだろう、やや口調が優しくなる。 「で、このクラスは自習、グループで教えあう、とかが基本だ。」 浜田は、三橋にあてがわれた机の、教科書などを入れる棚の端を親指で押すよう促した。恐る恐る右手の親指で押すと、ピッという電子音が出る。びっくりしたままのレンに浜田は苦笑しながら机の上を見るように言うと、机の上に何か表示されている。 「お!英語のマスタークラスがいた!」 三橋の現在の成績表が表示されていた。 「今まで英語のマスタークラスがいなくて大変だったんだよ…。あ、毎週金曜日、まとめテストと中間、期末テストあるから気を付けろ。」 「う、うん…」 「三橋、理数系強いな。文系壊滅的だけど。」 「う、うん…」 「まあ、このくらいのレベルなら、訊けば誰でも教えてくれる。…今日はのっけから英語やるぞー!」 おお! 勇ましくも楽しげな空気に…レンは… 「…う、うん。」 固まっていた事は言うまでもない。 皆が持ってる英語の教科書は中学生から高校生と幅広い。レンは文法を教えて攻撃に最初からへとへとになった。 「三橋、今まで学校に行った事は?」 疲労して、へたりとしている三橋に浜田が問いかける。ふるふると横に首が振られて、浜田がちょっとだけ驚く。 「そうか…。ま、このクラスにゃ、そーゆーの結構いるから、安心しろ。」 「そ、そうナノ…デス、カ…」 「ああ、このクラスは除虫屋の成れの果てやら、虫にやられて中途半端に能力に目覚めたヤツとか…な!」 浜田はクラスを見渡す。全員が苦笑しながら頷く。 「あー、付与士、三橋にちょっと気合いを!」 「りょーかい!」 クラスメイトが立ち上がる。さっき英語でうんうん苦しんでいた者の一人だ。 しっかりじっくりとパワー回復し、レンは他のクラスメイトに教わりながら、小学二年生の教科書の文章をたどたどしくながらも読み上げたのだった。 |
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「ああ、君が、三橋廉か。担任の山田太郎だ。」
良くも悪くも偽名だと分かる担任の先生を紹介された時には、レンの心臓はバクバクで、いつ破裂するかわからないくらいに緊張していた。 「ホームルームの時間だ。教室を案内する。」と担任は立ち上がる。レンは更にバクバク言わせながら後につく。 「この校舎に教室は一つ。君の生活の大半を過ごす場所だ。」 職員室から階段を上がり、三階の踊り場からざわざわと声が漏れている。 「呼んだら入ってこい」と教室前の廊下で待たされる。担任の声が低く響く。 「三橋、入ってこい!」 突然名前を呼ばれ、反射的にドアを開く。意外とすらりと開くのに驚きつつ、入る。 「除虫屋ニシウラの『癒し手』、三橋廉だ。…三橋、ボードに名前を。」 「ひ、ひゃい!」 慌てながらもペンを持ち、三橋 廉と書いた。するとボードから静かな音が鳴る。 「ああ、名前の書き方や癖をボードが登録した。」と担任はしれっと最新技術を説明する。 「三橋の席は、…おい、浜田!」 「隣あいてます~」 「クラス長の浜田だ。何かあったら問え。今日のホームルームはこれで終わりだ。」 担任は言い放つとさっさと教室からでていってしまった。 「おーい!三橋!席座れ!机の使い方説明するから!」 阿部や花井くらいの年齢だろう浜田という人物が机をこんこん叩きながら、反対側の手でぷらぷらと呼ぶ。 「は、はいっ!」 レンは慌てて机へと向かっていった。 |
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風景が流れていく。ニシウラの除虫枠から大きくはずれ、何かあれば買い物に行く街を過ぎ、見知らぬ街へとタクシーは走行する。この無人タクシーはどこぞの天才的なプログラマーと車のメーカーがタッグを組んで開発したという、今の時代の最先端の乗り物の一つである。それに乗るには様々な認証とかが必要で、レンも少しだけ辟易した。だが、それと引き換えに乗り心地は最高で、スモークフィルムのぴったり貼られた車内は静かで、人を見かけるとキョドってしまうレンにとっては有難いものだった。
大きな街を越え、やに四角い建物が増えたかと思って電信柱の丁目番地を見ると、学園都市に入った事がわかった。老若男女、すべての者たちが学園へと向かっているのが分かる。 どれだけ大きいかは、大学生組から聴いていたが、予想外の大きさにやはり驚いた。テレビで良く聞いた『東京ドーム○個ぶん』というのを思いだし、どれくらいなんだろと考えた矢先、車用のゲートにさしかかった。 がちゃりとタクシーが決められた位置に停車し、フロントガラスに難しい言葉が浮かび上がる。びっくりしている間に『認証完了』というメッセージが浮かび上がり、タクシーはまたがちゃりと動きだした。 タクシーは学園都市で定められた規則にのっとり、ゆっくりした運転で走る。途中何度も同じようなゲートをくぐり、とある校舎の裏側へと進み、停車した。ドアも開いたので、ここが自分がこれから通う学校だと思うと心臓がバクバク音をたてているのが分かる。 「い、…行くぞ!」 自分の荷物を持ち、意を決してタクシーから降りた。 「まず、は、職員室…!」 阿部にプリントアウトしてもらった地図と職員室までの行き方は、昨日までに頭に叩きこんである。カバンの中から屋内用シューズを取り出して、分かっているけど恐る恐る歩き出した。 |
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いつなんどきでも夜がきたなら朝が来る。当たり前のように来た朝にレンは…
「どどど… どうしよう。」 欠かさず行っていた朝のメニューをすっかり忘れた状態で、すっかりキョドっていた。 「7時には無人タクシー来るから。」と栄口が助け船を出したつもりが、余計な一言だったらしい。レンはかちーんと固まってしまった。あちゃ、と栄口は思いながら、ここのところ食欲が増えてきたレンにあわせた弁当を渡す。 「レン、そんなに緊張する事ないって。」 苦笑しながら栄口が言っても無理のようだ。カチンコチンに固まったレンをさあ、どうするかと悩んだ時、食堂のドアががちゃりと開いた。 「はよー、栄口、レン。」 あくびしいしい来たのは水谷だった。 「ああ、おはよう水谷。」「お はよ、う!」 それぞれを見て、水谷はにこー!と笑う。あ、これは地雷を踏む時の笑い方だと栄口は天罰とレンへのフォローをどうするかと考えた時、再度ドアが開く音。 「レン!今日からだな!あ、はよ!」 「うす!…レン、勉強頑張れよ!」 田島と泉だった。水谷が言ったら地雷確定キーワードを平然と使っても、レンはキョドらない。むしろ落ち着いたようだ。現役高校生パワーはやはり違う!と水谷と視線で会話する。 その時、レンの携帯がぴろろと鳴った。無人タクシーが近くまで来た事を知らせる音だ。 その間にも、阿部やら花井、巣山、西広、沖やらがわらわらと食堂に入ってきて、全員がレンの初登校を見送る事となった。 「い、行ってきます!」 口々に言われる「行ってらっしゃい」の言葉に励まされつつ、レンは無人タクシーへと乗り、すぐに走行が始まったのであった。 |
