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レンは目を覚ました。ぱちり、と言わんばかりの感じで。
「?」 私服のままである。考えてみたら、昨夜の記憶が途中で切れている。 「??」 全く訳が分からない状態でレンは首を傾げた。 その時、ドアがノックされた。 「レン、起きてる?」 声の主は栄口。 「お、起きてる!」 わたわたとベッドから抜け出すと同時にドアが開いた。 「おはよう、レン。」 「お、…おはよう!栄口くん!」 うん!良い挨拶と栄口は軽く笑うと、「レンにしては寝坊だから、シャワー浴びてきたら?」と言われる。慌てて時計を見ると、確かにあり得ない時間帯だ。 「レン、着替え持って…。シャワー浴びたらすぐに朝食だから。」 「う…うん!」 クローゼットの中から適当に服と下着一式を取りだし、わたわたと一階にある風呂場へと向かう。 その後ろ姿を見ながら、レンも普通の子になったなぁ、と栄口はしみじみと思ったのであった。 無人タクシーは、同じ時間に音もなくニシウラ玄関前に停車した。 「い、い…行ってきます!」 数々の行ってらっしゃいコールに背中を押されながら、レンは登校二日目を迎えたのであった。 PR |
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ご飯を食べ、シンクに食器を置くと、誰かが必ず茶を淹れる(阿部は除く)。今日は沖の淹れたほうじ茶だ。全員がほうっと息をつくと、歓談が始まる。いつもなら様々な話が飛び交うのだが、今日は違う。なんたって、レンの登校初日なのだ。話題にしないほうがおかしい。さっそく質問責めにあうレンは、あたふたしながらも質問の一つ一つに答えていく。
「浜田?」 レンの話のところどころででてくる人名に反応したのは田島であった。 「う、ん。浜田、くん。」 なんだなんだと田島とレンに視線が集中する。 「除虫屋に入ったとはきいてたけど、まさかなぁ…」と田島の声は弱いが、全員の視線を浴びる内容には変わりなかった。 「なんだよ田島、その浜田って。…知り合いか?」 阿部がさっそく訊ねる。田島もうーんあーん言いながらも、やはり、と決意したかと口を開く。 「レン、ハマちゃんは?」 「ハマちゃん…って、田島くん、と遊んでくれ、た?」 「そう!そのハマちゃん!」 ぱちぃんと手を叩いて正解!と言う田島に、まさか、という雰囲気が流れる。 「ハマちゃんな、名字、浜田っていうんだよ。」 「え?」 「ちょっと待て?クラスメイトにレンの幼なじみがいるってこと!?」 すっとんきょうな声をあげたのはやはり水谷である。他の者もどう対応してよいのか微妙な表情を浮かべている(阿部除く)。 「明日、学校行ったら、ハマちゃんかって訊いて…」 田島がレンを見る。その視線に他のメンバーが見て、苦笑を浮かべる。 こっくり、こっくり… 今日は疲れたのであろう。レンは話途中で船をこいでいた。 「起こす?」の水谷発言に巣山が背中に背負うジェスチャーをした。みんなレンには甘いなぁと苦笑しながらも水谷はレンに隣のテレビ部屋からあったブランケットをレンにかける。小さく寝息が聞こえてくる。完全に寝てしまったようだ。 田島、泉、栄口、そして巣山が席を立つ。全く気付かず寝ているレンに自然と笑みがこぼれる。 レンの椅子をずらし、がくっと倒れてくるレンの身体を泉が受け止め、田島がすかさずレンをおんぶしやすい格好にする。巣山はしゃがみこみ、受け入れられる状態になる。 レンをせーの!で巣山の背中に移し、栄口が素早くレンのだらんとした腕や足を持ちやすいよう調整する。 「パジャマじゃないけど…まあよし!」と栄口の言葉に巣山は少しよろけながら立ち上がる。両隣に田島、泉、栄口がフォローにまわる。 「おやすみな…さい」と田島がレンの挨拶を物まねし、食堂のドアが閉められた。 |
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宿題は誰にも訊かずにやったほうがいい。というクラスメイトからの助言もあり、夕食の時間ギリギリまで、漢字の書き取りドリルと格闘していた。田島が呼びに来なければ、まだまだやっていたであろう。
「漢字は慣れ、だな。」と共に迎えにきた泉も頷く。何はともあれ、夕食だ。三人とも、お腹グーグー言わせながら食堂のドアをあける。 廊下まで流れ出していた良い香りがドアをあける事により、一層強くなる。より一層腹がグーグー鳴る。 「か、唐揚げ!」 大皿に盛り付けられたあげたての唐揚げを見て、三人はふぉぉぉ!と良くわからない声をあげる。唐揚げは全員の好物だ。食事開始15分であとかたもなくなってしまう、どんぶり飯も幸せな一品!しかもいつもの二倍はある! 他の面子は既に席につき、三人の到着を待っていた。 「今日はレン初登校で奮発したよ。下ごしらえは大学組の半分が手伝ってくれたんだよ」と栄口。オレ手伝いした~と水谷をかわきりに、巣山、沖が手を挙げる。 「う れしい!」 幸せいっぱいな顔をして、レンが喜ぶ。その顔のみで自分たちにも笑顔が伝染した。 「レン、早く席につけ、冷めるぞ」といつも調子全開の阿部が言う。三人は慌てて席につく。 「よっしゃ!いただきます!」の田島の声に全員が反応した! その瞬間、唐揚げは三分の一、姿を消していた。 「うんめー!」 「お いしい!」 「美味い!」と生徒トリオが次々に声を挙げる。 「ご飯もたんと炊いてあるから」と花井の言葉の前に、田島と泉がどんぶり片手に席を立つ。レンははふはふとレモンの良い香りがする唐揚げに…アツアツの唐揚げにちょっと苦戦。猫舌だもんね。と西広が笑う。 どんな量でも、唐揚げは15分前に全て消え去っていたのだった。 |
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レンが栄口とお茶お菓子をつまみながら談笑していると、普段ならあっちふらふら、こっちふらふらと寄り道してくる水谷をはじめ、次々とニシウラのメンバーが帰ってきた。栄口は気づいたら全員分のカップを出している事に気付いた。
全員がレンの事を心配していたのか、とむずかゆい気分になった。 「レン、フランス語なんだけど…」 違った? 「テストで良い点とれたから、これありがとうの気持ちを込めて。」 水谷やら花井やらが、菓子や何か色々なものをレンの前に置いた。 「い、いい、の?」 「フランス語の点数があれだけあれば、評価ももらえるから!」 沖が笑顔で言う。隣で花井も頷いている。 「レン、もらえるものは貰え。」 違う教科を教えてもらっていた阿部が偉そうに言う。 「う、うん!あ、あ、あり…ありがとう!」 「どういたしまして」の言葉があちこちから流れる。 「なー、レン、学校難しかったか?」 テーブルの上にあったアーモンドチョコを泉と共に平らげた田島がたずねる。 「ううん?みんな、親切!」 「それは良かった!」 泉も機嫌良く次の菓子…ビスコへと狙いを定めてからレンの頭をわしゃわしゃ撫でる。 「レンの学級はひとクラスしかないんだろ?教師は?」 「先生は、みんな!」 巣山の問いに、泉とビスコをわけあいながらレンは答える。は?という顔をして、阿部を見る。 「あのクラスは年齢も学力もバラバラだから、教師じゃなく、生徒同士で教えあう。…だろ?レン。」 阿部の説明にうん!と頷くレン。 「じゃあ、レンも教えてるのか?」 二枚入りであるビスコの一枚をレンに渡しながら田島が訊く。うん…。と照れくさそうにしながらも頷くレンに、田島は興味を持った。 けど。 「晩ごはん作る時間だから、宿題あるヤツは今のうちにやれ」という栄口の言葉に、めいめいがカップを持ち、シンクへと置き、「レン、後でな!」と自室へ戻っていく。 レンも浜田から言われた漢字ドリルをするために、自室へと戻っていった。 |
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栄口は空撃士である。よって、空気の動きに敏感である。結界ごしだが、レンを乗せた無人タクシーが止まった感覚を感じ、外へと出る。
「おかえり、レン。」 窓を開け、声をかけると、レンは少し嬉しそうに歩いてきた。 「た、だいま!」という声を拾い、結構疲労している事を理解する。質問責めにでもあったのだろう。 玄関に入り、トントントンといつもなら音をたてないレンが階段を上がってくる音で、確信する。 「レン、おかえり。」 笑顔で話しかけると、おどおどといつもの顔で「た、だいま…」と返してきた。顔色がすぐれない。かなり疲れた証拠だ。 「まずは弁当箱出して!」 栄口はちょっとだけ心を鬼にして、レンのバッグを指差す。 おたおたとしながらも渡された弁当箱は、完全に空である事を確認して少しほっとする。 「手を洗って…?」 「…うがい!」 言うとバッグを置いて洗面所へと向かう。朝は弁当箱と筆記用具しか入っていなかったバッグに、いろいろな教科書やら何やらかが入っているのだろう。バッグはぱんぱんだ。 レンの様子だと、なんとかうまくやれたのだろう。何事も最初が肝心。レンの独特な口調はなんだが、優しく、良い意味で愚直なのが伝われば良いと皆で話したのは昨夜だ。 ぺたぺた音が近づいてきている。レンがまたびしょびしょのまま戻ってきたのだろう。 来週からしつけようと思いながら、栄口はタオルの用意をするのであった。 |
